1. がん(慢性骨髄性白血病)
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薬学生が実務実習で学ぶことが求められている代表的な8疾患について、患者シミュレータSimMan3Gを用いた薬物療法の効果を再現しているシナリオと動画教材をご紹介します。
eラーニングアワード2021フォーラムにおいて、九州保健福祉大学薬学部臨床薬学第一講座/(株)テレメディカ/レールダルメディカル(株)/イトーヤクでエントリーしていましたeラーニングコンテンツ「アナログ教材からアクティブラーニング・シミュレーション医療教育のコンテンツを供するフリーデジタル教材」が、医療系eラーニング全国交流会会長賞を受賞しました。
薬学生が実務実習で学ぶことが求められている代表的な8疾患について、九州保健福祉大学薬学部薬学科 臨床薬学第一講座の徳永仁先生が、患者シミュレータSimMan3Gを用いて薬物療法の効果を再現している動画教材を作成されました。
徳永先生はSimMan3Gで使用できる薬学教育モデル・コアカリキュラムで提示されている代表的8疾患「がん,高血圧症,糖尿病,心疾患,脳血管障害,精神神経疾患,免疫・アレルギー疾患,感染症」を基に、これらの病態、薬物療法の効果や副作用の確認が体験できるシナリオプログラムも作成し、一般公開されています。
これらのシナリオに沿ったシミュレーションの模様を動画で撮影した8疾患9症例をご紹介いたします。薬学生の学習ツールとして、薬剤師のスキルアップにも、是非、ご視聴ください。
1. がん
疾患名:慢性骨髄性白血病
アウトライン:
48 歳男性。体温37.3℃。脈拍84/分、整。血圧136/76mmHg。左季肋下に脾臓を3cm 触知する。疲労感と倦怠感あり。微熱、左上腹部膨満感も認められ、検査後、慢性骨髄性白血病と診断。イマチニブで薬物治療開始。6か月後、間質性肺炎で捻髪音( 音)と下痢の確認後、ステロイドパルス療法開始。疲労感もあり。さらに2 か月後、正常に生活ができるようになった。
2. 高血圧症
疾患名:本態性高血圧
アウトライン:
65 歳女性。高血圧治療に対するエナラプリルよる空咳の副作用歴あり( 呼吸困難を伴う舌、喉頭の腫脹)。以降、テルミサルタンでコントロールするが、1 年後、心房細動を伴う慢性心不全( NYHA 分類Ⅰ度)のため、カルベジロールの追加。2 週間後、この副作用で徐脈が起こる。
3-1. 糖尿病
疾患名:①Ⅰ型糖尿病(高血糖)
アウトライン:
29 歳女性。1 型糖尿病のため、インスリンを自己注射により使用していた。発熱 (感染症の疑い)を契機に3 日前から全身倦怠感、下痢、嘔吐が始まり、これらの症状に加えて意識障害が出現したため、家族に伴われて救急外来を受診した。アシドーシスにより血液pH が下がり、クスマウル呼吸が確認。昏睡状態後 (閉眼)、インスリン投与にて回復する。
3-2. 糖尿病
疾患名:②Ⅱ型糖尿病(スルホニル尿素薬服用後の食事なしによる低血糖)
アウトライン:
65 歳女性。患者は5 年前から高血圧症と糖尿病で治療中。カルシウム拮抗薬、利尿薬、スルホニル尿素薬およびビグアナイド薬を内服中。動悸を訴え、冷汗がみられる。立ち上がろうとしたときに転倒し、痙攣のため救急搬送。今朝、通常通りにスルホニル尿素薬を服用したにも関わらず、朝食を抜いて3 時間後に低血糖となったと思われる。体温下降、頻脈、意識レベルの低下( 閉眼)、振戦( 痙攣)や頭痛などの低血糖症状を再現する。ブドウ糖、フルスルチアミン、ヒドロコルチゾン、グルカゴンなどの投与により12 時間後に回復。
4. 心疾患
疾患名:うっ血性心不全
アウトライン:
54 歳女性。高血圧及びうっ血性心不全のためⅢ音ギャロップの聴取、さらに肺水腫の併発により水泡音が確認。手足の冷感、息苦しさも確認されることからジゴキシン、ニトログリセリン、トラセミドとリシノプリルにて治療開始。2 年後、まれに心房細動がみられるが、状態は安定していた。しかし、1 週間後に鼻水が出て喉が痛いなど風邪気味のためクラリスロマイシンが投与されていた。その結果、食欲不振と吐き気を訴え受診し、緊急入院となった。徐脈に加え二段脈、多源性心室性期外収縮 (脈)も確認された。ジゴキシンの血中濃度を測定したところ、2.2 ng/mL であった。
5. 脳血管障害
疾患名:脳内出血(クモ膜下出血)
アウトライン:
55 歳男性。高血圧のためバルサルタンによる薬物治療を受けるが、ノンコンプライアンスにより突然の頭痛、意識障害。救急搬送の結果、脳内出血。徐脈、高血圧、瞳孔は左右不同が確認される。また、状態悪化に陥った際、不整脈が出現し、心停止、救命対応が必要となる。
6. 精神神経疾患
疾患名:てんかん
アウトライン:
10 歳男児。てんかんのためフェノバルビタールを服用していた。半年後、傾眠傾向、羽ばたき振戦などがたまに見られ、コントロールが難しくなったため、クロバザムの追加。クロバザム服用後、傾眠傾向にあり、2週間後、眼振、意識障害をきたした。血清中濃度( 治療域15-30μg/mL)を測定したところ40μg/mLであり、治療有効濃度を超えていた。炭酸水素ナトリウム投与により尿のアルカリ化、利尿剤投与により、翌日には意識障害は回復した。
7. 免疫・アレルギー疾患
疾患名:アナフィラキシーショック
アウトライン:
10 歳女児。患者は膿皮症治療のために、アモキシシリンが投与された。アモキシシリン内服により、脈拍上昇、血圧低下、体温上昇をきたし、深い呼吸となり、喘鳴音が確認される。その後、さらに血圧低下、SpO2 も低下し、体温上昇、チアノーゼが確認されアナフィラキシーショックとなった。そこで、アドレナリンを投与することにより、一過性の脈拍上昇、血圧上昇をきたしたが、その後、回復となった。6 年後、患者はA 群溶連菌咽頭炎の診断を受けた。ペニシリンアレルギーがあることから、エリスロマイシンラクトビオン酸塩注射液が処方された。しかしながら、エリスロマイシンの急速静注が行われ、30 分後に心室頻拍が発現
する。
8. 感染症
疾患名:尿路感染症
アウトライン:
23 歳女性。突然の高熱(38.4℃)、排尿時痛、腰背部痛が見られ、腎盂腎炎の疑い。レボフロキサシン投与翌日には解熱 (37.2℃)したが、動悸が出現。話を伺うと過去にQT 延⾧の経験があることから、急遽レボフロキサシン中止しセフカペンピボキシルに変更された。3 日後、検査結果が判明し大腸菌感染による腎盂腎炎と確定診断。しかしながら、同時に下痢を生じたためミヤBM 細粒を追加し、翌日から下痢もおさまった。