UPMC East レポート(2)

開院前シミュレーション

さて、いよいよ7月2日のグランドオープンを1ヶ月後に控えた6月、実際の各病室でシミュレーションセッションが行われました。このシミュレーションの目的は、UPMCのSystem、主にRapid Response Systemが きちんと機能するか確認することです。現場の状況に応じて修正を加え、期待する効果が発揮できるようにします。また、病院内の設備・器具の使い勝手を確認し設置場所を修正したり、必要なものを確認したりすることも目的の一つです。
一般病床、ICU、術前術後の観察室であるPERI Anesthesiaでのシミュレーションでは、WISERが作成したFirst 5 Minutes を使用しました。このコースは、患者の状態が良くないことを早期認識し、緊急コールをし、コードチームが到着するまでの数分間、病棟や病室にあるリソースを利用して適切な処置を行えるようになることを目的としています。参加者は、各病棟に配属される看護師、呼吸療法士、Nurse Assistant、インストラクターはこのコースのDirectorでありAuthorでもある、Tomas Dongilli 氏(WISER Operations Director)、SimManのセッティング、セッション中の操作はLarry Kobulinsky氏(WISER Simulation Specialist)でした。シナリオは、定時のラウンドで患者に話しかけたところ反応がない、というシンプルなもの。約半数が他のUPMCからの転属ということを考えると一見簡単そうなシナリオですが、真新しい病室の中ではなかなかうまくいきません。Condition A(いわゆるコードブルー)の掛け方(電話でかけるもよし、ヘッドボード側の緊急用ボタンを押すもよし。但し、その場合どのような経路でコードが発動されるのか?)、ベッドの固定の仕方や柵のおろし方、BVMは普段どこにあるのか、救急カートはどこか。些細なことのように思えますが、私自身にもこのようなことがうまくいかなかった経験がありますし、それぞれの病室によっても微妙に違いがあります。

例えばICUでは、病室入り口の大きなガラス製の扉がフルに開き、様々な機材、ポータブルX線など搬入しやすくなるのですが、これがちょっと難しい。何人かでいろいろやってみてようやく開けられたという状況でした。また、手術や内視鏡の準備、術後観察室であるPERI anesthesia では、患者の状態に緊急の変化があったとき、Condition AやCでなく直接麻酔医を呼ぶとのことで、これは現場の人たちは知っていても、病院幹部は知らなかったという例でした。さらに、そこには救急カートがまだ設置されておらず、置き場所を探したけれどもいい位置にコンセントが見当たらない、ということにも気づきました。参加者は、実際に動いてみて様々な装備の使用法を学ぶとともに、気づいたことをフィードバックし、開院前にそれらを改善していきました。Emergency Departmentでは、救急患者の搬入後の初期診療、CTへの搬出のシミュレーションを行いました。図らずも、私自身もTrauma Physicianの役割を与えられ、頭部外傷患者の診療にともにあたりました。このシミュレーションでは、先ほどの環境要因に加え、Teamとして診療にあたる上でのコミュニケーションに焦点をあて、デブリーフィングでは、確実な情報の伝達を行うためのclosed loop communicationや各々の明確な役割分担を行うことの大切さなどを確認しました。さらに、脳梗塞が疑われる場合、患者の神経学的所見を映像で脳神経医に見せながら電話で支持を仰ぐ、というシステムになっており、そのビデオカートの位置や実際の使用法、どこにガイドラインがあるのか、などを確認するためにシミュレーションを行いました。ここでは、Simulation SpecialistのJon Mazur氏がSimManを通して患者役となり、呂律の回らない話し方などリアルな患者を表現してくれました。最後に、病棟外で患者が卒倒したような場合を想定し、第1発見者が救急コールを発動し、Rapid Response Teamが到着し蘇生処置を行ってEmergency Departmentに搬送を開始するまでのシミュレーションを行い、コードが発動されるプロセスや反応時間を確認しました。

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