妊娠第4期のトレーニング
分娩後、女性の身体、感情、そしてライフスタイルは大きく変化します。本記事では、母親と新生児のケアを改善するために、医療従事者はどのようにシミュレーションを使用すれば良いのかを検討します。
米国の女性は、その他の先進国の女性と比べて分娩中や妊娠に関連する原因によって死亡する可能性が高くなっています。1 実際、米国では毎年700人の女性が妊娠や分娩に関連する合併症によって命を落としています。2 そして、これらの死亡の60%以上は予防可能といわれています。3
妊産婦の死亡で最も一般的な要因:4
母親を失った子ども、娘を失った親、そして大切なパートナーを失った人– 妊産婦の死亡は、その一つ一つが家族の絆に悲しみをもたらします。
また、女性の年齢やライフスタイルが生殖能力やすこやかな妊娠に影響するのと同様に、分娩がスムーズに進むかどうかにも影響します。例えば、喫煙者全体の数は低下したとはいえ、米国ではいまだに女性の14人に1人が妊娠中に喫煙を続けています。5 これは、先天性欠損の原因となる恐れがあるほか、早産や低体重児につながる可能性があり、これらすべてが母親と乳児をリスクに曝すことになります。適切な産前ケアが提供されなければ、結果的にはハイリスク要因を悪化させることになり、分娩中に母親と乳児の両者に問題が起こりやすい状態になります。
米国では、約25%の女性が妊娠第1期に何の産前ケアも受けていません。6 女性が産前ケアを開始する時期は、人種や民族性、経済状況、そして妊産婦教育のレベルに大きく左右されます。7 このような産前ケアの遅れや欠如の直接的な結果として、緊急時のケアが必要になるのです。
シミュレーショントレーニングにより、緊急事態が起きた際医療従事者として適切に対処できるより良い準備ができます。8 ある調査では、シミュレーションに基づく子癇前症管理のトレーニングによって、知識、パフォーマンス、そして自信の度合いが改善されたことが示されています。9 この種のトレーニングは、特に産科医や分娩に関わる看護師が緊急時のチームワークスキルを調整する際に役立ちます。別の調査では、部門横断的なチームのメンバーを対象としたシミュレーショントレーニングによって、実際の分娩時に、異なるチーム同士のコミュニケーションだけでなく家族とのコミュニケーションが改善されたことが明らかにされています。10
分娩のトレーニングが医療従事者のチームにとって必要不可欠なのは、その他の医療分野とは異なり、注意深く同時に観察しなければならない患者が2人(または時にそれ以上)いるからです。母親の健康状態が悪化すれば、乳児に影響し、その逆も同様です。シミュレーションにより、学習者は安全な分娩を管理し、妊産婦と乳児の死亡リスクを低下させるために備えることができます。
本シリーズの次の記事をお読み頂き、産後のシミュレーションにも関係のある特定のリスク要因についてご確認ください。
* McGowan, K. (2018). See reference #3.