コンピテンシー基盤型医療教育 (CBME) にシミュレーションを活用しましょう - 役立つ 5 つのコツ
コンピテンシー基盤型医療教育(CBME)にシミュレーションを組み入れることが、実効性が高い学習アプローチとして浮上しており、医療従事者のトレーニングにも効果的です。シミュレーションによって、学習者は、安全でリスクのない、統一された学習環境で必須スキルを練習して習得し、リアルな実践体験を得ることができます。
教育プログラムのコンピテンシー基盤型医療教育 (CBME) にシミュレーションを効果的に組み入れましょう。本記事では、導入時に役立つ 5 つの実践的なコツをご紹介します。5 つのコツには、シミュレーションデータの活用や、成長マインドセットの醸成などが含まれています。ご活用いただくことで、効果的な学習と評価体験を創出し、学習者のコンピテンシーを向上させることができます。
CBME に即したシミュレーションを効果的に導入するには、まず、シミュレーションを組織が採用しているコンピテンシーにシミュレーションをマッピングすることが重要です。組織で使用するコンピテンシーには、米国医科大学協会(AAMC)が定めたものや、 EPA(一定の能力を身につけた学習者に、監督なしで任せられる専門的な業務項目)などがあります。シミュレーションをこれらのコンピテンシーに対応した設計にすることで、シミュレーションの実装を成功させることができます。
このプロセスを開始したばかりの組織でも、既存の教育プログラムに追加でシミュレーションを組み込むことを検討している教育機関でも、大事なのは、関係者全員が一同に会して協力することです。
「コンピテンシー基盤型教育に移行し始めた頃は、すべてのシミュレーション教育者が新人研修プログラムのリーダーに連絡を取り、新人のためにできることは何かを探究し、話し合いました」と、オタワ大学 および オタワ病院の医学博士・医師・FRCPC(カナダのカナダ王立内科医師会が認定する専門医の称号)である Curtis Nickel 博士は述べています。「シミュレーションをどのように組み入れ、評価や教育のなどの重要な要素をどの段階にはめ込むべきか話し合いました。」

「学習者の成長マインドセット」とは、今はまだスキルを身につけていなくても、時間をかけて努力を続ければ学び、上達できるという考え方です。これは重要な考え方であり、「コンピテンシー基盤型教育の本質」と言われています。1
Curtis Nickel, MD, Med, FRCPC
University of Ottawa / The Ottawa Hospital

シミュレーションを通じて、学習者はスキルを練習し、失敗を経験できます。このプロセスは、CBE の学習プロセスに欠かせません。2シミュレーションによって、学習者は自身の行動を振り返る豊富な機会を得られます。失敗は乗り越えられないハードルではなく、成長の機会と捉えられるようになります。

– Rosemary Samia, MSN, RN, CNS, CHSE, Director, Center for Clinical Education & Research
University of Massachusetts Boston

効果的な評価は CBME になくてはならない要素です。シミュレーションは、観察し、測定できる優れた評価方法です。シミュレーションこそが、学習者が知識を活用して自身にできることを把握する理想的な手段だと言えます。シミュレーションで学習活動を行うと、膨大な量のパフォーマンスデータが生成されます。このデータを効率よく整理し、管理すれば、プログラムの改善に役立つインサイト(洞察)やトレンドを知ることができます。
「学習者に関するデータの収集の道すじや方法を見直さなければなりません」と、オステオパシー医科大学のシミュレーションディレクターは指摘します。「そして、データの収集方法だけでなく、そのデータを実際にどのように活用し、学習を成功に導く方法も検討します」と彼は付け加えます。

ディブリーフィングは、シミュレーションの「中核」要素として重要視されるようになりました。なぜなら、ディブリーフィングをすることで、最も多くの学びが得られるからです。学習者は、ディブリーフィングによってはじめて情報をしっかりと吸収し、学んだことを議論し、コンピテンシーを向上させ、今後の行動を変えられるようになります。
ディブリーフィング中に行う振り返りは、学習を深めるだけでなく、学習者の判断を理解することにもつながります。学習者は、誤った理由で正しい行動を取ることがあります。その思考を探る手がかりは、振り返りにあります。もちろん、学習者は時に、間違った行動をしてしまうこともあります。しかし、振り返ってみると、学習者の理論的根拠は妥当だったケースがあります。つまり、この場合は、判断のどこかで誤りを犯したことになるのです。これに気づくことができるのが、振り返りです。3
このように、ディブリーフィングで大きな効果が得られることは明らかです。ですから、デブリーフィングを一歩先へと進める手段として、ビデオ録画の導入も検討されることをおすすめします。学習者は、ディブリーフィング用の質問に回答していくことで、自身のパフォーマンスを振り返ることができます。この場で録画を視聴することができれば、学習者は自身のシミュレーションの様子を振り返ることができます。これによって、自己反省が促されます。また、シミュレーション動画を録画できるプラットフォームで動画を操作すれば、特定の瞬間に注釈を入れられるため、後でその瞬間に簡単にアクセスできます。

エビデンスをもとに導き出した、シミュレーションのベストプラクティスに従うことで、シミュレーションの可能性を最大限に引き出しましょう。これにより、効果的にコンピテンシーを構築・育成し、評価することができます。
シミュレーション教育の導入時に頼りになる、優れた一冊をもし 1 つあげるとすれば、INACSL(国際看護シミュレーションラーニング学会)のHealthcare Simulation Standards of Best Practice ( INACSL による医療シミュレーションのベストプラクティス基準)®でしょう。役に立つ情報が見つかります。この基準は、基準項目を検証し、効果が実証された実用的な基準であり、業界で頼りにされるリソースとして、広く認識されています。
ベストプラクティスの基準に沿っているかどうかを検討する作業を、負担に感じる方は、気を楽にしてください。基準は、あくまでガイドとして役に立つように作成されたものにすぎません。INACSL も、基準は理想を掲げた目標にすぎないことを認識し、理解しています。また、状況やリソース、認定要件、その他の要因によって、導入や基準のレベルを完全に満たせない可能性があることも理解しています。